ムニマのおむつ離れ

おむつのとれねえ大学院生が、お絵描きしたり、おしゃべりします

キミならどっち?「Let`s GO アオカビ」「Let`s GO ケカビ」!

 今回はうちの実験センターで出している一般向けの読み物のコラムを書かせて頂いたので、内容そのままここにも置いておこうっていう記事です。うちの研究室に入って最初に行う課題をざっと紹介してるので少しでもうちの雰囲気を感じていただければ幸いです。

 

 本コラムでは本研究室の新入生が毎年行う伝統の課題「30属」をご紹介します。この30属という課題はズバリ!カビ版ポケモンGOです!カビというのは身近なものではミカンや食パンが腐ると生えるアオカビをイメージしてくだされば結構です。そんな身の回りのカビを捕まえて単離(1つの寒天培地に1種類が生えている状態に)し、同定(何のカビか?を特定)してスケッチする、というのが本課題です。見つけてゲットして図鑑で調べて仲良く(?)なる。ロマンの塊ですね!こうしてゲットするカビが30属*1に到達すると課題達成となり、カビを正しく扱える人として認めてもらえるようになるのです。

 

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写真1:研究室の様子。積みあがったサンプルの数はピーク時に400を超えました。

 

 さて、具体的な見つけかたですが、歴代の学生が様々な方法を試してきました。土を拾ってきて寒天培地にまく人、動物のフンを拾って湿らせて、そこから出るカビを採る人、食品を手あたり次第腐らせた先輩もいたそうです(本研究室は潔癖症の方を卒倒させる環境かもしれませんね)。土を耳かきで1すくいした量から、7属前後のカビがホイホイ生えてきます。なんだ、30属なんてすぐじゃないかと油断してはなりません。同じ属のカビを以降何度も目にすることになるのです。しかも頻出するカビは成長速度が非常に早く、他の珍しいカビを覆って見えなくしてしまいます。故にこの課題は、いかにメジャーな菌との遭遇を回避して、珍しい菌と出会えるか、の勝負であると言えます。僕の好きだった手法は昆虫を培地の上に歩かせるというもので、昆虫の体表に付着する菌が採れやすいという特徴がありました。課題は3カ月にわたって行われましたが、その期間に出会った昆虫は根こそぎ捕まえていた記憶があります。

 貴方のすぐそばにいる菌の多様さ、そして多様な菌を見つけるために道端のフンを拾ったり虫を追ったりと夏休みの悪ガキみたいな日々を過ごす学生たちに思いをはせて頂けたら幸いです。 

 

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写真2:Pestalotiopsis属の1種の分生子。3本の毛が昆虫の脚に付着する役目を担っているのかもしれませんね。

*1:属:種の1つ上の分類群。例えばツキノワグマ、ヒグマ、ホッキョクグマのような各種はクマ属という1属に分類されます。身近に同じ属で異なる種がわんさかいる菌類がいかに多様かわかりますね。